パラグラフテキスト |
2014年4月の消費税率の引き上げで消費が手控えられる中価格を引き下げて販売する動きが広がり、物価の上昇率が下がり始めた。異次元緩和の効果に悪影響が出ると懸念していた岩田氏は忸怩たる思いを募らせていた。黒田総裁は景気に与える影響は極めて限定的と主張した。意見の食い違いが公になると日銀が重視していた人々の期待が弱まり政策の効果が失われることを恐れ、岩田氏は日銀の外で自らの考えを主張することをやめた。前田氏は原油価格の下落や海外経済の減速などによって今後の物価の見通しが厳しいと黒田総裁に伝えたが、黒田総裁は揺るがなかったという。前田氏は黒田バズーカの直前にも目標の達成は簡単ではないと伝えていた。2014年10月、黒田総裁はバズーカ2と呼ばれる追加の緩和策に踏み切る。日銀が国債を買い入れる規模を30兆円上積みし80兆円に、ETFの買い入れを3倍に増やすとした。金融政策を決めるメンバーたちの間では反対する声もあったが賛成が多数を占めた。当時審議委員を務めていた白井氏は「最初はやったけど中途半端で終わったってことになると、ゼロ金利政策とか量的緩和が十分目的を達成しないで終えてしまったのと同じになると思った」などと話した。企業の設備投資は増えたもののその動きは力強さを欠いているという指摘もあった。名古屋銀行では企業に対して積極的な営業活動を行ったが、借り入れをして設備投資に動く企業は期待するほど増えなかった。2013年度、2014年度と企業の内部留保が増え350兆円を超えた。藤原頭取は「必要なものだけに投資をして内部留保をためていざという時に備えるというのが、バブル崩壊後の中小企業の行動様式になってしまっていた」などと話した。浜松のメーカー・ソフトプレン工業では、円安を利用して輸出で稼ぐこれまでのモデルには限界があると考え、2015年にインドネシアでの現地生産に乗り出した。2015年4月、黒田総裁が約束した2年が過ぎたが2%の物価上昇は実現しなかった。消費者物価指数は上昇率が低下し0%になった。黒田総裁は目標の達成時期を2016年度前半頃に先送りした。 |