パラグラフテキスト |
2011年6月、学習院大学の教授を務めていた岩田氏は招かれた勉強会で安倍晋三に1枚の図を見せ、日銀がそれまでの政策を大転換し国債を大量に買い入れて金融緩和を推し進めればデフレから脱却できると説明した。金融緩和によって物価を上げるようにすると企業の売上が増えて給料が上がり、ものやサービスが売れるようになる。企業はさらに価格を上げる好循環が生まれるという。当時の日本経済はリーマンショックや東日本大震災、歴史的円高で不況に陥っていた。日銀は市場に供給するマネーの量を増やす政策を行っていたが、岩田氏はその量が不十分だと批判しかつてない規模まで増やせばデフレから脱却できるとした。2012年12月、安倍は日銀と連携し大胆な金融緩和を行うことを公約の一つに掲げて総選挙で大勝し、第2次安倍政権が誕生した。当時日銀で理事を務めていた門間氏は日銀批判が世論の強い支持を得たことに衝撃を受けた。門間氏は「日本経済をよくするという大きな目的を金融緩和だけで実現できるとは考えていませんでしたれども、有識者が言っている路線にある程度すり寄っていかないと人々の理解も得られにくいという思いもあった」などと話した。選挙の翌月、日銀側では門間氏が中心となって政府との間で共同声明をまとめた。日銀は物価安定の目標を2%の上昇と定め、金融緩和によってできるだけ早期に実現するとした。 |